海の健康を害さずに美味しい食事を楽しむ方法
「世界海洋デー」(6月8日)と「国際寿司デー」(6月18日)にちなんで、日本文化に直結する寿司について、また持続可能な漁業や地元産の旬の食材生産の重要性についてお話しします。
持続可能な旅行において重要な課題であるガストロノミー(美食)について取り上げるには、絶好の機会。海洋が大きな脅威に直面していることはよく知られているため、海洋の健康という課題に取り組むことは重要です。
寿司の歴史
寿司は日本文化に深く関わる料理であり、世界中で非常に人気があります。今日、グルメな寿司体験のために大金を払う人もたくさんいますが、『History Today』のアレクサンダー・リーは、寿司は当初、洗練されたものでもなければ、日本的なものでもなかったと指摘しています。
実際、寿司の起源は約2000年前に遡り、魚を保存する方法として、また発酵させた米に入れることで食べ物を無駄にしない方法として生まれました。この寿司の最初の形は、東南アジアのメコン川のほとりで「貧しい」食べ物として登場したところから始まります。その後、現代の中国に伝わり、最終的には日本にも伝わりました(日本では718年に編纂された養老律令に最初の記述があると言われています)。魚と米の組み合わせは時代とともに進化し、徐々に発酵が抑えられ、手間のかからない調理が可能になってきました。
現在の寿司に最も似ているのは、19世紀に登場した江戸前と呼ばれるもので、料理人の華屋与兵衛が考案したとされています。今日に受け継がれている寿司は、魚を新鮮なまま素早く提供できる冷蔵庫の出現によって可能になりました。アレクサンダー・リーによれば、冷蔵庫は「贅沢品」とみなされていたため、寿司は当時、特別な日に楽しむ洗練されたご馳走、「祝祭」の食べ物となったと考えられています。
今日、寿司には様々な種類や調理法があり、友人や家族とシェアするのに適した美味しい食事であることは間違いありません。
しかし、魚料理である以上、それを食す際には、産地や漁獲方法、養殖方法、提供される魚種の脆弱性、乱獲の有無などを考慮しなければなりません。このような環境への影響に加え、持続不可能な漁法は、漁業者の収入源や雇用機会が減少する可能性があるため、地域社会にも影響を与えることを忘れないようにしましょう。
現代の日本の漁業
今日の持続可能な寿司を語るに至った背景を理解するために、日本の漁業の伝統を見てみましょう。
漁業は日本の沿岸地域における主要産業であり、日本の食糧安全保障のためだけでなく、伝統的な知識や文化の面でも不可欠です。主に捕鯨に関連して批判を多く受けていますが、日本は近年注目すべき貢献をしています。
日本は「持続可能な海洋経済に関するハイレベル・パネル」のメンバー14カ国のひとつで、政府は持続可能な漁業を確保することを目的とした制度を策定しています(「漁獲割当制度 - 日本の共通漁業権」を参照)。このプログラムの目標は、沿岸の小規模漁業者を保護し、管理決定にコミュニティのノウハウを取り入れることにあります。カリフォルニア州のFishery Solutions Centreは、日本における共同漁業権と共同管理の取り決めが、漁業者の技術革新の促進に寄与してきたと指摘しています。
しかしながら、独立系のミンデロー財団が指摘するように、「全体として、日本は魚類資源の回復に限定的な進展しか示していない(中略)SDGsの目標14.4達成に向けて前進するためには、日本は乱獲された資源を回復し、科学的根拠に基づく管理を強化するための緊急行動をとる必要がある」とされています。また、日本の「海洋健全度指数」の総合スコアは100点満点中68点で、世界平均の69点よりやや低くなっています。
国際連合食糧農業機関(FAO)は、現在の日本において「漁業・漁村の食料安全保障以外の自然環境保全、国家安全保障、伝統文化の振興・継承など、多面的な機能も高く評価されている」ことを強調しています。
水産物を持続的に収穫すること、伝統的な漁法での漁業へのアクセスを確保すること、沿岸生息地と海洋生態系を保全すること、そして沿岸地域の持続可能な観光事業に参画することは、国の持続可能な発展と海洋の健全性のために極めて重要であることは明らかです。
持続可能な寿司
この観点から、より環境に配慮した方法で作られた寿司を普及させ、持続可能な水産物のサプライチェーンが確保されている飲食店での食事を奨励することはとても大切と言えます。さらには水産物の禁漁期を尊重し、使用する魚のトレーサビリティと原産地を把握し、持続可能な漁業によるものであることを保証できる飲食店であれば、より安心と言えるでしょう。
これを見分ける具体的な方法の一つとして、これらの飲食店が、持続可能な漁業のための海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)のMSCやASCのような、外部の公平な審査機関を通じて取得した持続可能性に関する認証を有している食材を使用しているか、ということを確認することが挙げられます。
他に寿司をより責任ある方法でいただくもう一つの方法は、「4つのSルール」を守ること。CNN、NPR、フォーブス、ニューヨーク・タイムズ、ボストン・グローブなど、あらゆる国際的なメディアで取り上げられ、持続可能な水産物の問題について頻繁にコメンテーターを務めるキャッソン・トレナー氏によって確立されたガイドラインです。
このルールの4Sとは、Small(小さい)、Seasonal(季節)、Silver(シルバー)、Shellfish(貝類)の頭文字からきています。
消費者としては、小さい魚を優先して選んだ方が良いと言われています。理由は、小さい魚は食物連鎖の下位に位置し、成長が早く死期が早いため、漁獲による影響が低いと考えられているからです。同様に、旬の魚を選ぶことで、旬でない魚への需要から生じる二酸化炭素排出量(保存や物流など)や環境破壊を減らすことができます。
その一方で、光り物の寿司ネタを注文するのは良いかもしれません。なぜなら、サバやサヨリなどは適切に管理された漁場から調達しやすいとされているからです。また、貝類は養殖による環境への影響が鮭などの他の魚類に比べて少なく、海産資源への依存度も低いため、こちらも環境面からは消費者として積極的に選びたい食材です。
伊根:漁港の町
このような漁業に力を入れている日本の地域や、地元の特産品が手に入る場所をお伝えするために、私たちは伊根町に足を運びました。
伊根は、京都府北部の与謝郡に位置する漁村です。日本で最も美しい町のひとつとされ、海沿いに舟屋が並ぶユニークな町です。
かつて伊根では、ほとんどの家で漁業を生業としており、また船が主要な交通手段であったため、ほとんどの家が船を持っていました。今では珍しいこの舟屋は、「舟屋」と「母屋」に分かれていました。
「舟屋」は、海岸沿いに立ち並び、1階部分に船を停めるガレージのような空間を備えた家のことを指します。一方「母屋」は、人々が生活を営む住居として使用されていました。当時はこの2つの建物は繋がっていましたが、近代化が進み今では舟屋と母屋の間に車両が走行できるよう道路で分離されています。
現在、伊根の漁業は高齢化が進んでいます。漁師も減ったため船を手放した家も多く、船が停まっている舟屋はあまりありません。町では、さまざまな資金援助や漁業に関する研修等を提供し、若い人たちに農業や漁業のために町へ移り住んでもらうことを奨励しています。
興味深いことに、伊根にはお魚屋さんがありません。住民は、漁港の朝市で直接魚を買っています。地元のガイドの話によると、毎朝地域の人だけに漁船が漁港に到着したとの知らせが届くそう。これを合図に各々市場に足を運んで新鮮な魚を仕入れるのです。
美味しい料理を楽しみながら、美食の持続可能性と海の健康に貢献する ー 日本で、郷土料理や伝統的なお寿司を楽しみながら、持続可能性に貢献しませんか?
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